秘/恋
部屋のドアノブに手をかけながら、魔法めいた気分で、あたしは鏡を覗き込む。
部屋の片隅にたてかけた全身鏡。
それこそ、ソックスの爪先からプリーツの延びかけたスカート、水色のポロシャツにはねた髪まで、がっちり全身が映っている。
あたしの狭い部屋には、立派すぎる鏡。
その表面に指をはわせて、あたしの顔を検分した。
少し赤くなった瞳に、下がりがちな眉。
くもりがちな顔が、落ちていく気分に拍車をかける。
いつでも、あたしはぐちゃぐちゃ。
いちばん欲しいものは、いつも目の前に転がっていて。
でも、いちばんの願いを、叶えるつもりなんてない。
叶えない方法が、最良だって信じてる。
結論――八方ふさがり。
一年間、避け続けたどんづまり。
リバウンドして戻ってきやがった。
「……やってられるか」
あたしは制服のスカートをひきはがし、ベッドに逆戻り。
身体を丸めて、布団に潜り込んだ。