秘/恋
「明良、本当に……」
『出ていって』
懇願する前に、唇が凍る。
明良が、ベッドに膝を乗り上げて来たから。
あたしはブザマに、両手を振り回した。
「なんでッ!」
「そんな、血を分けた兄をナメクジみたいに」
「似たようなもんよッ! にゃああ!」
――悲鳴。
明良の、
あたしと同じパーツを組み上げた顔が、至近距離。
あたしは手を伸ばしたいような、
そのくせ突き飛ばしたいような、
座り悪く疼く気持ちを、持て余す。
「なにしてンのよッ!」
『あたしを、どこに持って行くつもりなの?』
訊きたい質問は、口から出ない。
言葉にされたら、
あたしも知らないふりはできない。
できることなら、
明良が全部、勝手に自ままに巻き込んで欲しい。
知らないふりをしていれば、
あたしは、被害者になれる。
頭の片隅で、あたしはいつも
そんなコトを考えている。
とんだ卑怯者だ。
「明姫が、希むコト」
うそぶいて、明良が笑う。
自分とおんなじ顔だけに、怒り百倍。
あたしは、真っ赤になった。