秘/恋



気を取り直して、あたしは反撃を試みた。


「彼女、気にするんじゃない? 妹とお手々つないで登校する、重度のシスコンなんて」

「しないよ、貴子は」


くすっと、明良が笑う。

その笑みと、彼女の名前の親しげな響き。

簡単に、あたしは嫉妬できてしまう。


「貴子は、知ってるから」

「え……?」

「俺が誰を好きか、貴子は承知してる。その上で、俺たちは付き合ってるんだ。
たぶん……」


――明姫も、おなじだろう?


明良が、さらりと云い添える。


「それが、嫉妬しない理由にはならないけどね」


すい、と明良の親指が、絡め取ったあたしの手の甲をなぞる。

ぞくん、と寒気がして、喉がひりついて、同時にやりきれなくなる。


あたしたちは【おなじ】なのに
あたしたちは【ひとつ】じゃない。

【ひとつ】じゃないから寂しくて、
すぐに傾いて寄り添いたくなる。


でもなぜ、
その相手が取り替えようもなく、
明良じゃなきゃならなかったんだろう。



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