秘/恋
ぶるぶるぶるって、耳障りな音が鳴っている、ような気がする。
その音はあたしの意識から学校のプールひとつ分離れて、しかもがっつり底に沈んだ状態で鳴っている、感じで。
鳴っているのはわかっていても、あたしは、取らなきゃ取らなきゃ、って思いながら、そう思う自分を、半分冷静に眺めていた。
どれくらい、そうしていたのか。
すっと、誰かが、あたしにふれた。
なにをしているのかな、って考えるより早く、その手の主はあたしのブレザーのポケットをさぐり、騒音の発生源を拾い上げた。
ほどなく、鳴りやんだ携帯の悲鳴。
でも同時に、あたしの頭も覚醒しはじめる。
ここは家のベッドの上じゃなくて
明良のお隣。
遠くへ向かう電車の、シートの上だったんだって。