秘/恋
「……ごめん。悪かった」
あたしの、『いい加減怒るよ』って気持ちは、まっすぐ明良に届いたらしい。
ため息まじりにアタマを下げて、明良が苦笑いを浮かべた。
「ほんと、ごめん。
ちょっと情緒不安定。
明姫は、ここにいるのにな」
「……意味わかんない」
「いいよ、別に。考えなくていい」
「なにそれ」
「いいんだ」
無理矢理会話を切って、明良は足を早める。
つないだ手に振り回されて、あたしはつんのめりかけた。
「明良、あぶないじゃんッ」
「ごめん」
軽い謝罪のあとで。
「海へ行こう、明姫」
海のすがたなんてカケラもない、やぼったい駅なんて、見えてないみたいに。
不安になるくらい明るく、明良はささやいた。