秘/恋
……ごお……



「着いた……」


白いじゃりが敷かれた、そっけなくまっ平らな海浜公園。

ところどころ意味不明なオブジェが立つその向こうに、不透明な水色のさざなみ。


「着いちゃった……」


砂浜もなく、澄んだ水もなく、でも確かにここは、あたしが希んだ海。

隣で、明良がおなじように、遠くの波間を見ている。

水際に寄って、海水にふれたり。

波とたわむれたり。

そんな気持ちには少しもなれなかった。

道々の浮いた気分はしんと静まり、あたしはただ、黙って待っている。


明良の、言葉を。



「明姫」

「わかってる」


つないだ手のかたい強張りが可哀想で、あたしはせめて、笑ってみせた。


「あたしは、わかってるから。
明良の連れてきたかった【果て】は、ここまでだって」



< 164 / 219 >

この作品をシェア

pagetop