秘/恋
「俺の傍にいて。
キスして。
その腕で俺を抱いて。
それを他人に見られたらどう罵られるか、俺だってわかってる。
でも、止まらないんだ。
『諦める』っていうの、どうやってすればいいのか、わからない」
言葉を重ねれば重ねるだけ、明良の腕のちからが、強くなる。
明良の、あたしと同じ顔立ちが歪んで、子供みたいに途方に暮れた瞳になる。
――あたしには、なにもできない。
あたしには、ここが世界の果て。
この上なく好きなひとの腕に囲われているのに、なにもできないあたしは、絶望的に無能。
消えてしまいたいほど、無力。
深い深い絶望がある場所が、あたしのこの世の果て。
――じいさまの、嘘つき。
もう一度、明良につぶされた胸の奥で、繰り返す。
お互いだけが、お互いを守る。
そんなの嘘っぱちだ。
嘘っぱちにしたくないことばかりが、嘘っぱちになるように、なっている。