秘/恋
――誰か。
あたしは生まれてはじめて、あたしと明良以外のなにかに、助けを求めた。
――誰か、あたしたちを壊して。
切実に、身を削らんばかりに、でも、他力本願。
「明姫?」
あたしは明良の腕のなか、その熱を振り払うみたいに、首を振った。
――違う!
誰の手でもない。
あたしが、あたしの手で、
全部まっさらの
スクラップにしなきゃいけない。
そのはじめの起爆剤が欲しい。
痛みなんか吹き飛ばして、
あたしの両目をふさぐ嵐を、
――誰か!
こころが叫んだ瞬間、声がした。
「明姫!」
「きゃっ」
ざっ、とふぞろいな髪が流れ、耳元で風が鳴る。
ぐい、と肩を引かれて、視界が明るくなる。
明良の身体の影から抜けて、ひかりが目を射る。
そこにいたのは、バカみたいに派手な、金髪の少年。
「……樹也……」
あたしが、明良から離れていた一年で得たもの、だった。