秘/恋
……ろく……
そのときの感覚は、ちょっと云い表せない。
金髪の樹也の姿に、ざざっと視界が広がる。
波音が、聞こえた。
目に映っても見えていなかった海が、広がる。
ぎゅっと囲われていた明良の腕のなかの世界が、ほどける。
糸玉がほどけるみたいに、全部がはじけた。
残ったのは。
あたし。
目を見張る明良。
そして――樹也。
ざらついた海の公園に、三人、立ち尽くしているこの、現実。