秘/恋



べったり重なった身体から、いろんな気持ちが伝わる。

戸惑い。

不安。

なによりも、頑丈な壁じみた情。

明良の土台。

あたしの内側にあるそれと、寸分変わらない厄介な気持ち。

――それだけで、充分満足。

思わず、微笑った。


「ばいばい」


あたしは両手で力いっぱい、明良を突き放して、走り出した。



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