秘/恋
まず見えたのは、安っぽい真っ白な天井。
『見えました』、と感じた次には、大盛りいっぱいの吐き気が襲ってきた。
口元をとっさに押さえようとして、その肝心の腕がひどく重たいことに気づいた。
ワケがわからなくて、ぱしぱし、と二度、瞬きをした。
「あきちんッ!?」
食い付かんばかりの勢いで、誰かがあたしの傍に駆け寄ってくる。
あたしの、ベッド。
これまた真っ白な、味も素気もないベッド。
ようやく、鈍いあたしにも、理解ができた。
ここは病院で、あたしは患者。
激重な身体は、溺れたあとだから。
――あたしは、死にぞこなったんだ。