秘/恋



独りになったあたしは、糸の切れた凧みたい。

なにも、だれも、あたしを助けない。

ぞっとするほど、自分って存在が心許ない。

――でも。


「いつか慣れる。充分慣れる。
だから、ぜんぜん大丈夫」


つぶやいた言葉は、ひどく頼りなく響いたけれど、でも、大丈夫。

決めたんだ。

間違って壊れて死んだって、もう、だれかに守って欲しいなんて、思わない。

だれも守れないなら、願わない。


「だから、大丈夫なんだよ」


繰り返す。

呪文みたいに数えきれないくらい繰り返せば、身体に染み付く。

刻まれる。

あたしはそれを、経験で知ってるんだから。



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