秘/恋
「また、会いたいな」
「いつでも、きっと会いたいって思う。
でもそれ以上に、おまえがしあわせになれって、願うよ。
俺がいない場所で、しあわせになれってさ」
「あたしも、神さまにお願いする。
でもおなじくらい、あたしのいない場所でしあわせになるなんて、許さないって呪うわ」
「怖いな」
明良が、呆れたように片眉を上げる。
「でも、俺もおなじように、祈る。
俺がいなくても平気なんて、許さないってさ」
「陰険だ」
「おまえもおんなじだろ?」
顔を見合わせ、ふたり同時に吹き出す。
ちょっとヒステリックにも響く笑いの発作。
バランスを崩して、お互いをお互いの支えにして、それでも延々笑い続けた。
笑いの波が、ゆっくりと引いていく。
あたしと明良、おなじ彩を宿した瞳が、かちりと重なる。
「キス、しようか」
明良の返事は、ほんの少しだけ緩んだ唇。
お許しを得たあたしは、この世でいちばん欲しいものに、手を伸ばす。
身長は十センチ以上違うのに、スプーンがぴったり合わさるみたいに指先を絡ませて、肌を重ねて、最後に。
惜しむように、唇を寄せた。