秘/恋
「あきちん、仕事の調子はどう?」
あたしはいま、ひょんなことからなぎの婚約者の秘書におさまっている。
大学を卒業したばかりのぺーぺーの頃は、失敗じゃないことの方が少ないくらい。
自分が情けなくて、毎日へこんでた。
「あのひとに、意地悪されてない?」
そんなあたしを知ってるせいか、婚約者と親友への気遣いか。
なぎはとにかく、心配症だ。
「ぜんぜん! まっさか」
「こっそり意地悪されてんじゃねえの?」
あいつは陰険だから、とここぞとばかりに樹也が喚く。
彼の悪口に便乗できるときは、絶対にのがさない。
樹也はとことん、ボスが嫌いらしい。
「毎度ながら、気になるわねえ。どんなひとなの? 明姫さんの上司」
「普通にいい、できた上司よ。ついでに男前」
「あら」
貴子さんが楽しそうに笑う。
上司がなんだかんだよりも、歯噛みする樹也と、微妙な顔をしてるなぎを面白がってるみたい。
このひとも、大概イイ性格だ。
この十年で、あたしもまた、仕事をしてちょっとタフになって。
たぶん――変わった。