秘/恋



――いまなら、どうするのかな。


人生の節目節目に、考える。

力ない子供だったあたしには、なにもできなかった。

でも経験を重ね、ひとつひとつ『ちから』を得るたびに、あたしのこころは、あのときに戻る。

どうしようもない、クセみたいなものだ。


「ちゃんと歩きなさいよ!」


もはや腐れ縁と化した酔っ払いどもを引き摺って、夜の街を歩く。

四人のなかでは、樹也がいちばんアルコールに弱い。

いまもゆらゆら千鳥足。

なぎに叱り飛ばされてる。


「明姫さん、今日はあのおバカさんは?」

「なぎが持って帰りますよ」

「明姫さんがお持ち帰る気はないんだ?」

「貴子さん……」

「なにしゃべってんの?」


あたしたちの会話に、樹也が割り込んでくる。


「おもーいッ!」


のし、と両肩にかかる重量に、あたしはうめいた。

いわゆるおんぶオバケ状態で、樹也がゲラゲラ笑う。


「貴子さん、明姫をいじめないでくださいネ。明姫は、俺の、お姫さまなんだから」

「あら、ごちそうさま」


くすっと、意味深に貴子さんが笑った。



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