秘/恋
二人羽織みたいな状態で、ずるずるあたしたちは歩く。
「樹也……」
「ん?」
浮かれてにこにこの樹也の機嫌を損ねないように、こっそりささやく。
「ごめんね」
むっと、樹也の眉間にしわが寄った。
「なんのコトだか、わかんねえよ」
ぎゅっと腕のちからが強くなる。
何人ものひととすれ違う。
あたしたちの奇行に、振り返るひと。
見向きもせずに足早になるひと。
でも、だれもあたしと、つながれない。
それが、普通にもなってる。
――そう、考えていた。
「……ッ?!」
突然。
耳許で、音のない爆竹を鳴らされたみたいな衝撃。
なにが原因だったのかわからずに、あたしは振り返った。
視線が、人混みをさまよう。
すぐに、あたしの瞳は、見つけてしまった。
――その、後ろ姿を。