秘/恋
さすがに一瞬、凍り付いた。
ついでに、こいつについてはもう一件。
根性悪く、わざわざ俺の前で明姫にキスしやがったバカ。
俺のなかで、コイツの扱いは即座に決定。
『こんなヤツに構う必要なし』
俺はひんやりとした視線に切り替え、無言でヒヨコ野郎に背を向けた。
「ちょっと」
ヒヨコがさえずったけれど、黙殺。
両手いっぱいのブリックパックがしみじみ、恰好悪い。
重ね重ね、貴子を恨む。
あのオンナ。
そろそろ、『恨む』を『呪う』に切り替えてもいい頃かも知れない。
実行力をもって『殺す』を選ぶと、返り討ちに遭うから、その程度で打ち止め。
勝手な思考でアタマを満たして、目の前の障害物を脳ミソから押し出した。
「ッて、待てよ! 荘野明良!」
ぐい、と今度は、二の腕を引かれる。
不意打ちの接触に、ヤバイと思いながら、ざわっと、寒気が走る。
「――ッ!」
条件反射で払いのけて――大後悔。
「うわッ!」
勢い余って、ぼとぼとぼと、と両手から、ブリックパックがこぼれ落ちた。