秘/恋
「明姫?
なに……泣いてるワケ?」
ぎょっとした顔の明良。
駆け寄られてはじめて
だらだら涙を流しているのに
気付いた。
アタマと微妙に直結していない
透明な水が頬を伝う。
……なにやっているんだろ、あたし。いまさら。
ぐい、と乱暴に手のひらで拭う。
「なんでもない」
「なんでもなくて泣くのかよ、おまえ」
「蛇口のパッキンが緩むこともあるのよ」
「おまえは旧式の水道管かよ」
きゃんきゃん云い合っていると、明良が煮詰まったように髪をかき回して。
「ああ、もう……ッ!」
長い腕で巻き込むみたいに
あたしを、抱き寄せた。