秘/恋



「俺は、三荻。三荻樹也」


――知ってるよ。


声に出さずに、吐き捨てる。

美術クラスの僧侶。

音楽クラスのドレッド。

書道クラスの金髪。

自由が売りの我が校でも悪目立ちの一年三人。

こいつは、結構有名人だ。

派手な印象ばかりの人間に、明姫が近付くなんて、思わなかった。

じくり、と胸の奥が疼く。


「俺の名前は、知ってるんだな」

「もちろん。カノジョのお兄サマですから」


しれっと、樹也が笑う。

むかつく。

ケンカを売られたからと云うよりも、普通に明姫を彼女だと、自分のものだと宣言できる立ち位置が羨ましくて、むかつく。


「とりあえず、ご挨拶に。以後お見知りおきを、お兄サマ」

「……俺は、関係ない」



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