秘/恋



「で、ホントに何の用? 俺、忙しいんだけど」


積み上げられたプリントを叩いて、繰り返す。

絶対条件で、『嫌いなヤツ』。

だけど、俺はコイツのことをなにも、知らない。

知るのも嫌なんだ。

情報を蓄えて、骨に肉を纏わせて、生きた人間にしたくない。

明姫と俺の間に、『他の人間』なんて置きたくない。

身勝手な、希みだ。

俺の刺々しい視線を受けながら、金髪オトコはスチールデスクに手を着いている。

ガリガリの身体。

ガキくさい自己顕示欲の証みたいな、黄色い髪。

だけど真っ黒な瞳はやけに大人びていて、俺はなんだか、子供じみた不安に襲われた。


「一応、仁義だけは通しておこうと思ってさ」

「仁義?」


穏やかなトーンと大袈裟な単語。

俺は、眉をひそめた。



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