秘/恋
「一生懸命なのはわかるけど
バカみたいだね、あきちん」
強風に巻き上げられる髪を押さえながら
なぎがあっけらかんと云う。
「……うるさい」
舞い散る埃で滲む目をこすり
あたしは低く唸る。
「一生懸命は一生懸命でも、
おにーちゃんから
逃げるのに一生懸命なんて、
自慢にならないか」
なにげないしぐさで。
なぎは手を伸ばして
あたしの首筋をつついた。
風でバサバサになったボブ髪で隠れる
耳の下あたり。
「ついてる。
って云うか、残ってる」
「……ッ!」
あたしは勢いよく
手で首筋を隠した。
なぎはそんなあたしを
仕方ないなあって顔で
見つめている。