秘/恋
「イツヤ、喜べ。
おまえには勿体ないくらいのカノジョ、紹介してあげる。
ほら、このコ。
かわいいでしょ」
金パツ少年を『イツヤ』と呼んで
なぎはその手からコンビニ袋を受け取った。
「は?」
イツヤはパカンと、口を開ける。
「はい、ご苦労様」
子供みたいにされるがまま、
なぎに手のひらを返されて、
ぽんと札を置かれたところで
正気に戻ったらしい。
「なんだって!?」
「なぎ、なに云い出してんの!?」
イツヤの喚き声に、
遅ればせなあたしの悲鳴が
重なった。
「ハイハイ」
なぎはまず、
イツヤにくるりと背中を向けて
あたしに向き直った。
「なぎ!
てめえナニ云い出しやがる」
「イツヤは黙る!」
なおも喚こうとするイツヤを一喝で黙らせて
あたしに笑みを見せる。
……ギャップが怖い。
「こいつは、樹也(いつや)。
あたしの親戚よ。
アタマは切れないけど、性格はホドホド。
悪い物件じゃございません」
「ナニひとをモノ扱いしてやがる」
「だから、黙れっつの。
あんたの意思は訊いてない。
あきちん、コイツで恋愛というか、男女交際なるモノ、試してみない?」