秘/恋
まるで、
【ダルマさんが転んだ】。
動いちゃダメだと思えば
余計に動きたくなったりして。
暑くもないのに汗が、手のひらにたまる。
あたしは少しだけ、指を動かした。
そう、少しだけのつもりで。
でも――。
「あっ……」
動けば、やっぱり負けだったのか。
両手に抱えたいちごみるくのパックが、滑り落ちる。
てんてん、と転がって、
落ち着いたのは、樹也の爪先。
勝ち負けなしの奇妙な勝負は
あっけなく終わった。