秘/恋
あたしが強く出れるのは
明良となぎだけ。
あたしは
絵に描いたような内弁慶なんだ。
「こっちは、三荻(みつおぎ)。
8組。書道選択クラス」
びくびくのあたしにあきれたのか。
いちごみるく一口分くらいトーンをゆるめて、樹也が云う。
それよりも。
「書道……?」
この金パツで、筆・墨・硯。
「似合わない……」
「余計なお世話だ」
おずおず呟いたあたしに
樹也は顔をしかめてから。
「でも、よく云われるよ」
にやり、と笑う。
その笑顔は意外と純朴で、
意地悪そうには見えない。
あたしはとりあえず試しに
固まった膝の力を抜いてみた。