秘/恋
「格好いいな……」
「どこが!?」
樹也は
露骨に顔をしかめたけれど。
あたしにしてみれば
その潔さは感動ものだ。
……それに比べて。
あたしは、
腕に抱えたいちごみるくを
見下ろしてみる。
それから、樹也を。
――へぼすぎる自分はイヤ。
なら、一度くらい飛んでみてもいい、かもしれない。
「じゃあ、お願い、してみたいかも」
するっと、
そんなセリフが飛び出した。
「ふうん」
なんの感慨もなさそうに、
樹也がうなずく。
そのドライさが、爽快だった。
――明良は、
どんな顔をするだろう。
ちりり、と胸が、かすかに痛んだ。
――あたしには、必要のない痛み。
「よろしく、お願いシマス」
もう一度。
あたしは喉に力をこめて、つぶやく。
唇が紡いだ言葉を、自分の耳で聴き、深く刻み込む。
――自分を、振り切るために。