秘/恋



同じように気付いた樹也が
明良を顎で示す。


「あれ、あんたの?」

「『あんたの』って、なんですか?」


無造作な質問に
自分でも驚くほど、トゲトゲしい声が出た。


「なんでもね」


樹也が、肩をすくめる。

あたしは、
それどころじゃなかった。


――明良に見られた。


表情は、わからない。
わかりたくない。

でも、そのまなざしは
あたしという生き物を揺らすのに
充分な威力を持っていた。


どうしよう。

どうすんの、って。


バカみたいに考えてる。


立ち尽くしたあたしの手。

放り出されたその手が
強く引かれたのは



――そのとき。



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