秘/恋
「『わかんない』、か」
壁にへたりこみそうなあたしを細めた目で眺めて、明良がつぶやく。
「俺は、明姫がなにを考えているか、わかるよ」
「……じゃあ、どうにかして」
うつむいた顔に、ぼさぼさの髪が落ちる。
それをかき上げて、呟きを足許に落とした。
「あたしを、元に戻して」
――誰のことも好きじゃなかった、
好きなことに気付かなかった頃に。
「あたしを、助けてよ」
無茶を云っている。
自分でも、わかっている。
「明姫のお願いなら、なんでも叶えてやりたいけど。
それは、無理」
明良が、ひっそりと笑った。
うつむいた頭を、軽く撫でて離れる手。
優しい、慰め。
「俺も、苦しいから」