秘/恋



わずかにかがんだ明良が、
頭の上に落としてきたキス。

明良の背中が、
当たり前みたいに
リビングに吸い込まれていく。

磨りガラスを透かす暖色の光。

じいさまの低い声。

明良の押さえた笑い声。

――当たり前の団欒。


「は……」


両目を片手を覆って、天井を仰ぐ。

――壊したく、ない。

だから、明良への想いも、ただの錯覚にしたいんだ。


――そういう気持ち、
本当にあんたはわかっているの……?



< 58 / 219 >

この作品をシェア

pagetop