秘/恋
「明姫。おまえと血の繋がりのある人間は、私と明良だけ。
私だって、いつまで生きているかわからない」
「じいさま、若いくせに毎回じじくさい。
そういうの、赤いちゃんちゃんこ着る歳になってから云ってよ」
「一応じじいだからな。
明姫。私が死ねば、この世におまえたちふたりだけだ」
なんども繰り返し聞かされた、じいさまの言葉。
いまでは少し、恨んでいる。
「だから、明姫。明良を、大切にな。
明良は……」
「わかってるわ、大丈夫。
ちゃんと仲直りするから、心配しないで」
上っ面の明るさで、じいさまの言葉を断ち切る。
【仲直り】って、なんだろう。
どの状態になれば、【仲直り】なんだろう。
ちっともわからない。
そんな自分にツッコミを入れたい気分。
でも、
ウソでも誤魔化しでも
使える手段を百使ってでも、
これ以上
じいさまの言葉を聞きたくはなかった。
繰り返される言葉は、刷り込み。
じいさまに云われるたびに
当たり前に大きくなっていく
明良の存在。
もう、これ以上要らない。