秘/恋



早朝の住宅地。

午前七時。


――なんで、ここに三荻樹也がいるのかな?


ボケた頭の十センチ向こう側で、考えた。


「迎えに来た」


テンション極低のあたしに対して、
朝っぱらから樹也は元気そう。

片手に下げていたコーヒー缶をゴミ箱に投げて、かつかつ軽快に歩き出す。

寝不足で斜めになったあたしは、
それだけで逆恨みモードに陥りそうになる。


「せっかくだから、彼氏彼女らしいコトしよう。まずは、同伴通学ってコトで」


やる気満々の、樹也の声。


「い」

「別に、あんたの希望は関係ないね」


『イヤ』と口走りかけたあたしを、あっさり樹也が遮る。


< 67 / 219 >

この作品をシェア

pagetop