秘/恋



「で、早朝から同伴通学ね。
仲良しでなにより。
月下氷人冥利に尽きるよ」


閑散とした教室に、
なぎのくっきりした声がよく通る。


「相変わらず朝から元気よね、なぎは」

「そう云うあきちんは無闇に眠そだね。
そもそも、こーんな早く来る必要もないのに」


なぎが指差す時計は
七時三十七分を示している。

おとといまでのあたしは、
八時半ギリギリの走り込みだった。


「お陰サマで」

「……眠れないの?」


唇に寄せたカフェラテの紙コップの影で
なぎがささやく。


あからさまな労りは、大嫌い。

だからこそ、こういうなぎは、好きだった。


「ありがと」


答えの代わりに、ひっそり笑みを浮かべた。



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