秘/恋
「ほら」
真上から、冷たいブリックパックが突き出される。
見上げると、樹也の顔。
「いちごみるくって、意外とマニアがいるんだな」
「……ありがと……」
おずおずと受け取って、とりあえず涼を求めて額に当てる。
寝不足のボケた頭に、冷たさが染みた。
ヒヨコみたいな樹也の髪は、まだ目に慣れない。
あたしの世界はくっきり線が引かれている。
なぎは線の【内側】。
……明良も、【内側】。
でもまだ、樹也は【内側】に置けそうにない。
優しくされても、【違う】から。
でも、じりじりと、全くの【外側】から移動してきている。
あたしも、完全に【外側のひと】だと、無視できるほど興味がないわけじゃない。
妙な立ち位置だ。