秘/恋
「おまたせ」
トレイを抱えた樹也が、足で椅子を引いてあたしの隣りに座る。
動作を区切らないせわしさで、次の瞬間、あたしのトレイに牛乳瓶を置く。
ピンクのガラス。
いちごみるく。
「そんだけなら、せめて飲み物でカロリー取れよ」
云うだけ云って、両手を合わすが早いか箸を取り、トレイの上をさくさく攻略しはじめる。
キツネうどん(大)。
カツ丼(特盛り)。
副菜のコロッケ。
ザク切りにされたこんもり野菜(偽称サラダ)。
「燃費の悪い一族だね……」
『ありがと』じゃない言葉が、勝手にこぼれる。
「食は生活の基本だし」
「喰わないと動けないだろ」
ふたりの口から飛び出したセリフまで、よく似ている。
自然、笑みが浮かんだ。