秘/恋
……くう……
抱き止めた樹也の肩越しに
扉が開くのが見えた。
緩めたネクタイと、
白いシャツ。
真っ黒な、
加工のされていない、
あたしと同じ色の髪。
――明良。
「ばいばい、明良」
あたしたちは
やっぱり【半分】で
お互いがいちばん希むことは
声にしなくても通じ合えた。
――だから。
明良は、なにも云わず、
視線だけを残して出て行った。
ぐちゃぐちゃになったあたしのなかでたぶん、いちばん強い希みだったから。
明良なんか
……明良を好きなあたしなんか
いなくなってしまえ、って。