秘/恋
……ぜろ……
好きなひとを好きであることが
決して
好きなひとをしあわせにしない。
そんな状況に陥ったとき
ひとが取れる手段は
それほど多くないと思う。
あたしは、
まず逃げようとした。
好きなひとが不幸になるのを見たくないし
ふしあわせな彼を目にして、あたしが傷つくのが嫌だった。
でも逃げたって、どこかで影がほの見える。
細い細い糸が、
大切だって気持ちが、
まっすぐにまっすぐに、
彼へと伸びているんだ。
その糸の裁ち切り方を、あたしは知らない。
そう――いまは、まだ。