秘/恋
「あきちんは文系私大だよね」
「うん。それ以外無理。いろいろと」
「理系、全滅だもんね……」
「……お陰様で」
理系教科はあひるの群れ。
再追試をなぎと樹也に叱られながら乗り切ったことが、記憶に新しい。
「樹也は理系よね?」
「そだね」
HRが終わり。
潮が引くように生徒が消えていく教室で、あたしたちはだらだら話を続けた。
「ヤツは意外と理屈っぽい。
合っていると思うよ」
少し陰った日差しが、肌に優しい。
とろとろしながら、あたしはつぶやいた。
「そうだね。理屈で納得を引き寄せるタイプ」
なぎもうなずく。
と、真顔でまじまじと、眠りかかったあたしの顔を覗きこんでくる。