秘/恋
付き合いはじめてから、知ったコト。
三荻樹也は、お坊ちゃまだ。
お住まいは、どこに出しても恥ずかしくないお屋敷。
平屋の柱の一本一本に歳月が染み込んで艶を帯び、広い日本庭園には太い幹を備えた木々が、あるべき場所にあるよう、どっしりと構えている。
その庭の一角にある小さな離れが、樹也の部屋だった。
元は茶室だったというそこは空気が静かで、樹也が積み上げた生活感と溶け合い、部外者のあたしですら拒まない。
自然と、居着くようになった。
……確かに、その半分は眠っていることは認めよう。
「時間。もうそろそろ門限間に合わなくなるだろ」
ぼやんと、携帯を引き寄せる。
「あ、あやや。そだね」
ぼさぼさになった髪を指で梳いて、立ち上がる。