秘/恋
……さん……
とぼとぼ帰り着いた我が家。
すでに三和土にはじいさまの革靴と、
明良のでかいローファーが並んでいた。
短い廊下の先のリビングにも、
ドアのすりガラスを透かして、
明かりが見える。
「ただいま」
ずるずる脚を引き摺る心地で、でも軽いトーンで云う。
じいさまのいる場所で、理由も説明できない憂鬱なんてさらせない。
一年前の『あのとき』決めた、自分ルールだ。