once again
車椅子を室長に押してもらいながら、病院に入った。受付を済ませ、待合室で順番を待っていた。

先に足首のレントゲンを撮ると言われ、室長と一緒に回った。

「ここまでしなくても、大丈夫ですよ。捻挫だと思うので」

「いや、念には念をだよ。捻挫で済めばいいけど…」

少しして、診察室に呼ばれた。

こんな偶然てあるんだろうか…
どうして、知り合いがまたかぶるの?
室長の同級生は、私の兄の同級生でもあった。

「え、陽さ、…」
「あ、涼…」

お互い知り合いだと、口に出してしまいそうになったのを、必死に抑えた。
陽さんも、そう。空気を感じ取ってくれたみたいで、黙ってくれていた。
少し遅れて診察室に入ってきた室長は、その事に気付かず、話を始めた。

「悪い、陽。急な飛び込みで。会社の部下なんだ。捻挫だとは思うんだが…」

「…そうか。とりあえず、匠は出てもらえるか?プライバシーもあるし」

「あ、そうだな。高瀬、遠慮せずに痛む所は言えよ?じゃ、陽あとは頼んだ」

「分かった」

室長が、診察室を出たのを確認すると、陽さんが話しかけてきた。

「びっくりしたよ。まさか涼香ちゃんが来るなんて」

「私もですよ。まさか室長の同級生が陽さんだったなんて…」

「匠とは、高校ん時の同級生なんだよ。悠貴は高校違ったからな、匠は涼香ちゃんの兄貴の事は知らないよ」

「…そうなんですね。少し安心したかも」

悠貴とは私の兄だ。
高校から陽さんとは離れてしまったけど、親同士が友達ということもあり、家族ぐるみでの付き合いが、今でも続いていた。
瑠璃の事も知っている、数少ない内の一人だ。

「聞いたよ。蓮の秘書だって?涼香ちゃん、まさか如月商事に入ったなんて知らなかったよ」

「…、えぇ、兄から何も聞いてませんか?」

「悠貴?あいつ、涼香ちゃんが如月商事に就職したなんて話してなかったよ」

「……えぇ、まぁ、いろいろあって」

陽さんは、私の歯切れが悪いのに気がついたみたいだった。それ以上話を聞こうとはしなかった。
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