once again
「ま、俺たちもいい大人になったから、なかなかみんなで会うって事がなかったからな。仕方ないのかもな。ま、涼香ちゃんの顔を見る限りじゃ、あまりいい風ではないみたいだね?」

私がまだ小さかった頃を知ってるだけに、隠し事は出来ないみたい。
黙って頷いていた。

「先に医師として、レントゲンを見た上での診断をするよ。捻挫してるよ、まぁ、ヒビとか入ってないから心配しなくてもいいけど、腫れもあるからあまり今無理すると筋も傷めかねない」

「え?そんなに?軽く捻っただけなんどけど」

陽さんは、首を振って足首に触れた。

「……っ、痛っ」

「ほら、ちょっと触ったぐらいで、こんなに痛がってる。涼香ちゃんが大丈夫だって言っても、悠貴に知られたら俺が怒られるよ」

兄の名前が出る度に、ドキっとしてしまう。

「陽さん、あ、兄に最近会ってますか?」

「悠貴?いや、あいつも立場が今変わった所だろ?なかなか忙しくて、ここ半年は会ってないよ。たまに電話で話するぐらいじゃないかな。涼香ちゃん、帰ってないの?」

言葉につまった。
実際、如月商事に就職先を決めた時に、家族に止められて、それ以来顔合わしてないなんて、言える訳もなく。

「ま、いろいろあるよな。とりあえず、仕事は当分休んだ方がいいね。わかった?」

「え、あ、でも仕事を休む訳には、専務に迷惑を…」

言葉につまった私を何かあると、感じて違う話に変えてくれた陽さんだったけど、仕事は休めない…これ以上の迷惑をかけられない。

「涼香ちゃん、今無理してまでする仕事じゃないよ?言いたくないだろうから聞かないけど、蓮と何かあったんだろ?違う?」

「あ、…」

「本音を言えば、何があったのか聞きたいけど、匠も何か隠しているから、匠から何があったかを聞くよ。今は、涼香ちゃんは気持ちも身体も休めるべきだ。違うか?」

「はい…」

そして、室長が診察室に呼ばれ陽さんから、ひどい捻挫で安静、しばらく仕事は休ませろ、と指示した、医師からの忠告として。
ただのデスクワークなら、心配ないけど、秘書として働いている以上、動かない訳にはいかないから、無理はさせるな、と。

私としては、デスクワークだけでいいなら、メールを見たりしての秘書室だけでの仕事は出来ると、訴えてみたけど、2人から却下された。
室長はちょうどいい理由が出来た、と言われ、陽さんからは休んだら気持ちも落ち着くでしょ?医者の言う事は聞きなさいと耳打ちされた。
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