once again
「氷室室長、酷すぎるよ。何それ。許せない、涼香辞めた方がいいよ、会社」
「酷すぎる。でも、お酒に酔ってたからって、記憶忘れるものなの?専務さんも信じられない!」
有里華は専務に対して、美玲は室長に対して、怒っていた。
「有里華、そうは言うけど、あんただって、記憶よくなくしてるじゃん」
「え?あ、それ言う?エッチしたまでの記憶なんて普通なくす?私それはないもん!」
自分の事を言われた有里華は、そんな事ない、って言ってたけど、そこまでの記憶ってなくさないよね、普通。
「…あんたね、それは人それぞれじゃない?セックスした事は覚えていても、相手が誰か?って事はすり替えられたら、そうなのかな?って思うでしょ。本人そこに、いないんだから」
「えぇ!そんなものなの?」
葛城さん、ここにいなくてよかったかも。こんな話出来ないや…
「涼香は、どうしたいの?」
「え?私…」
二人の話をどこか遠くで聞いていた私。急にどうしたいの?と聞かれて返事に困った。
「瑠璃には、会社辞めなって言われたんだけど。その方がいいかな、って思ってる。専務とその鏑木物産のお嬢さんとの結婚を見るのも辛いし、好きだと言えないのも辛い…」
「そうだね、その方がいいのかも、ね…」
「そうなのかな…」
「え?」
「……え?」
有里華が、違うんじゃない?と言ってきた。