once again
迷っている間に電話は切れた。

「…あ、切れちゃった。電話出ればよかったかな…」

♪♪♪♪♪♪♪

またかかってきた。

「もしもし?あ、あの…」

「もしもし、俺だ分かるか?」

「…え?」

表示も確認せず出た私は、かけてきたのは専務だと思っていた。

「聞いてるのか?涼香」

「に、兄さん?な、なんで?」

「久しぶりの兄貴に向かって言う言葉がそれか?」

「え?あ、ご、ごめんなさい」

あまりに久しぶりに聞く兄の声に戸惑っていた。

「今いいのか?仕事中じゃないのか?」

自分からかけてきておいて、よく言うよ。

「いいよ。今休んでるから」

「休んでるから?じゃ、出てこれるか?電話じゃなんだし」


「無理だよ。足怪我して休んでるのに、出歩いてるの見られたら言われるよ」

「は?怪我?」

しまった、言ってしまった。

「じゃ、家にいるんだな?」

「え?あ、いや、あの…もしもし?」

「すまない、南青山の涼香のマンションまで行ってくれ」

私が喋ってるのに、私のマンションまでって、誰に言ってるのよ…

「もしもし?兄さん?来る気?」

「行っちゃ悪いか?待ってろ」

「もしもし?」

電話は一方的に切れた。
兄さんが来るって…
どうすればいいの?
こんなにタイミングでかかってくるって…
はっ、もしかしたら、陽さん兄に話したの?いや、怪我を知らなかったんだから、聞いてないのか…

なんなの?

あ、瑠璃!
瑠璃に連絡しよう!
せめて兄さんが来るまでに…話聞いてもらわなくちゃ。

私は瑠璃に電話をかけていた。

別の着信表示があった事に気が付かずに…
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