once again
「悠貴様、到着しました。どうされますか?」

運転席から蓼科さんが、兄に声をかけてきた。

「このまま、駐車場に回ってくれ」

「かしこまりました」

言われるまま、蓼科さんは車を駐車場に入れた。

「ね、兄さん、ここ何処?」

「涼香、今から黙って俺の腕にぶら下がっとけ。何か言われても笑ってればいいから、分かったな?」

は?
ぶら下がるとは??

「な、なに言ってるの?兄さん。意味わかんないし」

「いいから。とりあえず、笑っとけ。頼む。蓼科」

「はい」

「涼香を連れて、ここへ行ってくれ。そこに園田がいるから、園田に涼香を引き渡してくれ。その後、俺から連絡入れるまでここで待機して欲しい」

「かしこまりました。では、行って参ります。涼香お嬢様行きましょうか」

ガチャ

隙のない動きで、蓼科さんが車のドアを開けた。
な、なに?

「兄さん!園田って、兄さんの秘書の園田さんなの?」

「そうだ。話は園田から聞いてくれ。頼んだ、蓼科」

「はい。かしこまりました」

ドアの前で、頭を下げた蓼科さんが、どうぞと私をエスコートした。

何が何だか、分からないまま兄に言われたお店に私は案内された。

「涼香さん、ここです」

中に入ると、園田さんが手を挙げた。
すると、蓼科さんが後はお願いします、と私を置いて駐車場まで帰って行った。

「園田さん、ご無沙汰しています。今日は?何があるんですか?」

「まずは、座って下さい。お久しぶりです。聞きましたよ、秘書なさってるとか?」

「兄に聞いたの?」

「えぇ、社長怒ってましたよ。自分の秘書はしないくせに、って」

それか。

「…で?今日は何?こんな格好までさせられて…」

「今日は社長、食事会があるんですよ。そこで、あなたを彼女として紹介すると…」

は?へ?

「はい?えー!」

大きな声で叫んでいた。
その後の園田さんが慌てて私の口を押さえたのは言うまでもない。
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