once again
蓮さんとの電話の後、私は兄達がいる病室に戻った。

「涼香、電話いいの?」

「うん、休んでいいって、会社当分休ませてもらえたから…」

「じゃ、その間こっちに来れるな?」

兄が乗り出してきた。

「病院にいるだけだから、会社には行かないわよ。兄さん、一人で十分回せるでしょ?」

「分かってないな…涼香。カリスマがいるんだよ。親父が抜けた今、お前しかいないだろ?」

「…っ、そんな事言わないで」

「フッ、ま、冗談だよ。親父の事は頼んだからな、会社はどうにかするさ」

「兄さん…」


それから2日程して、父の意識が戻った。
陽さんからも、もう心配はないと、太鼓判を押してもらった。
ただ、仕事は当分してはいけない、と釘を刺されていた。

「お父さん、もうすぐ退院だね。早く快復出来て安心しました。兄さんも安心してるんじゃないかな」

「お前らには、心配かけたな。すまなかった」

父が私達に頭を下げた。
私と瑠璃は、驚いて頭を上げるように父に言っていた。

「ところで、涼香。会社どうした?辞めたのか?」

「…いえ、休んでます」

「…そうか、私ももうこの体だから、会長職も出来ないだろう。そうなったら、やっぱり涼香にいてもらいたい、と思うんだ」

「お父さん…」

「悠貴もやってくれてるが、あいつだけでは荷が重いだろう、涼香が助けになってくれる事を望むよ」

「お父さん…それ、涼香じゃないとダメなの?」

「瑠璃、そうだな、これは涼香が適任だと思うよ。こればっかりは譲れないな」

「涼香、どうするの?会社辞めるの?」

「お父さんが倒れてから、ずっと考えてるの。このままじゃいけないんだろうな、って。兄さんに負んぶに抱っこじゃ」

「涼香、悠貴に聞いたんだが、お前、如月の息子と付き合ってるのか?」

ドキッ

「…え?な、兄さんに聞いたんですか?」

「…だから、敬語は止めなさいって言ってるだろ。付き合ってるか?」

慌てる私に顔色一つ変えず父が言った。

「はい、付き合って…ます」

「そうか…」

父は、それから黙ってしまった。
怒られるのかと思ったけど、どうしたんだろう?
ちょうど、母が病室に入って来たから私と瑠璃は帰るね、と帰ってきた。

「涼香、本当にどうする気なの?仕事、如月辞めるの?」

「…辞めるにしても、言わなきゃいけないでしょ。彼に…こんな事なら、何もない関係だったらよかったのに…」

「涼香…、私は別にいいんじゃないの?と思うけど、ダメな事なの?」

ダメなんじゃないんだろうけど、全てのタイミングが合ってないんだろうな…瑠璃と話をしながら、そんな事を思っていた。
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