once again
失礼しました、と鳥越部長に頭を下げミーティングルームを後にした。
私が出てくるのをまっていたかのように、美玲に腕を引っ張られた。

「涼香、内示だった?」

「うん、当たり。ね、今この話出来ないから、夜いつもの店で待っててくれる?」

そこまで話していると、鳥越部長がさっき私がいたミーティングルームから出てくるのが見えた。
美玲にも見えたみたいで、分かった、と声には出さず合図してくれた。

ぼーっとする中、総務部に戻った私を水野部長が声をかけてきた。

「高瀬」

「はい」

返事をしながら、水野部長のデスクに行った。

「その顔じゃ、聞いたね?鳥越から」

「はい。聞いてきました…」

「こっちとしても、痛手になるから高瀬の異動は止めたかったんだが、押し切られてね。どうにもならなかったんだよ」

申し訳なさそうに、水野部長に頭を下げられた。

「水野部長!やめて下さい。止めてくれたという話は鳥越部長からも聞きました。もうそれだけで充分です。ただ突然だったので…」

「そうだよな。俺も驚いているんだ。まさか、総務部から引っ張っていくなんて…」

水野部長が言う事を聞いていると、今回の異動は異例中の異例らしかった。
普通そうだよね、秘書課に秘書いるんだから。

やっぱり、あれが原因なのかと落胆してしまう。

水野部長は、引継ぎもあるけど、実質辞令が出た時点で異動してもらうとの事だった。

何もかもが早すぎる。

答えを探しても、何が正解なのか答えは見つからない。
疑問は膨らむばかりだった…
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