once again
水野部長から、荷物の整理はゆっくりでいいよと言われたが、さすがに机だけは片付けたいと思い、皆んなが帰った後に中の私物を片付けていた。元々私物をたくさん置いていた訳じゃないから、すぐに片付けられた。小さな箱にまとめられるぐらいに…
その箱をロッカーに入れ、美玲が待っているお店に向かった。

会社近くにあるダイニングバーに入ると、カウンターに座っている美玲が見えた。
お店の人が、私に気が付いて美玲に耳打ちをすると、すぐに後ろを振り返った。

「お疲れ様、遅かったじゃない」

ごめんね、待たせて、と言いながら美玲の横に座った。

「片付けしてたの、皆んなが帰った後じゃないとね…まだ、知られると困るから」

「あ、そっか」

「今日は何にしますか?」

顔なじみのバーテンの和希さんが、にこやかに聞いてきた。

「モヒート、アルコール強めでお願い」

「かしこまりました」

「…涼香、大丈夫?」

「大丈夫じゃないかも…」

「ね、異動って誰の秘書になるのよ?その話あったんでしょ?」

「うん。あったよ」

「どうぞ、モヒートです。アルコール強めにしてますよ」

「和希さん。いつもありがとう」

そう言って、和希さんが出してくれたモヒートをぐいっと一気に流し込んだ。
喉が渇いていた事もあり、半分ほど飲んでしまっていた。

「…専務なの」

「え?な、なんて?専務?」

「そう。ただの秘書課勤務なんじゃなくて、専務の専属秘書なの。ねぇ、美玲。専務って、どんな人だっけ?社長の弟さんだよね?思い出せないのよね…美玲?」

美玲が口を開けて固まっていた。

「どうしたの?美玲?」

「は、っ…な、どうしたの?じゃないわよ。涼香、専務って今度帰ってきた社長の息子の事じゃない!」

「え?な、何言ってるのよ。そんな訳ない…」

「ない事ないでしょう?昨日、辞令があったって人事部で騒ぎになってたじゃないの、忘れたの?」

はっとした。

完全に忘れてた…
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