once again
「ここだね、君の家…」

「え?」

ここだね、と言われて驚いた。
私はマンションの場所を、言ってないのに調べていたのか、マンションの前で車を停めた。

「あ、はい…ここです」

「フッ、どうして?って顔してるけど、住所ぐらい調べられるのは分かってるだろ?社員のデータは全て見る事が出きるんだから」

「…そ、そうですよね」

ありがとうございました、と車から降りようとした。

「高瀬さん」

腕を掴まれ、同時に名前を呼ばれびっくりして振り向いた。

「は、はい」

私は降りかけていた車に留まった。

「蓮も君の能力には驚いている。しかし、思った以上に出来る君に、興味を持っている事も確かだ。相手は会社の次期社長だ、もし何かを企んでいるのであれば、それを排除しなければならないと、俺は思っている。
蓮とは長い付き合いだから、そう言う感は働くんだ。俺が言う意味分かってくれるね?」

「…は、はい」

そう、専務は次期社長。
室長が言いたいのは、恋愛事になった時に大変だと、言いたいんだろう。
何かを企んで近づき、会社に対して損失を与えるかもしれない、と。
専務自身が、恋愛事で仕事が疎かになるとは私は思いもしなかったが、室長は過去に経験があるのだろう。

だから、その事を危惧していると。

「試すような事をして悪いと思ってるが…」

「大丈夫です。室長が仰ってるような事はありません」

本当の事。
何もない、

何もありえない。

「ありがとう。ただ、これだけは分かってほしい。君の能力は、素晴らしいものだ。続けてくれるね?」

辞めたい、と言えば辞めさせてくれるのだろうか。
確認の為の、続けてくれるね?なのか。


心を決めた。


「はい、出来る限り勤めさせていただきます」

そう言って、車を降りた。
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