once again

何が起こったのか、私には分からなかった。
いつもの室長のからかい、だと思ってみても、どうしてあそこまで専務が怒るのか私には分からなかった。

いつも、表情なんて出さない人なのに。

私は、専務の秘書になって、まだ数日だけど、仕事をしていく中で専務の誠実さ、真剣さは身に染みて分かってるつもりだった。

つもり、だったのに…

気がつけば、問題のパーティは明日に控えていた。
昨日、瑠璃から身代わりは中止で大丈夫と言われ安心していたけど、こんな状態で専務に同行出来るんだろうか。

室長が、私に関わろうとするのは、多分昨日言われた事が正解なんだろう。

【専務に近づく女を排除する】

私がそれに当てはまるとは、自分自身でも思っていない。

専務は確かに、イケメンだし、専務だし。男の人としても、仕事をしてる中でも分かってきたけど、優しさとかいろんな事も含めて魅力的なのは確かだ。
専務じゃなかったら、好きになってたのかな？
出会いが違ってたら…

分からない。

恋愛経験の乏しい、未経験の私にはハードルが高すぎるよ。ほんと。

過去に経験した、あんな思いをするぐらいなら、恋愛なんかしなくていい。
好きになっても、瑠璃の事を好きになるだろう、とか。
悪い方向でしか、考えられないようになっていたから。

美玲や有里華には、そんな男ばっかりじゃないから、恋愛してみなよ？って言われ続けたけど、出来なかった。
今まで…

「分からなくなってきたな。何がしたいんだろ私。とりあえず明日頑張るしかないかな」

専務が出て行った扉を見ながら、口に出していた。