once again


「瑠璃、綺麗ね」

見惚れるとは、この事だろう。

「何言ってんの。涼香には負けるわ。葵さん、それに合う靴とバッグも、お願いね。あ、上着も。私のもまとめてこれでお願い」

瑠璃はそう言うと、自分の財布からカードを出した。

「ち、ちょっと!瑠璃。ここは別でしょ。私自分の…」

「何言ってんの。私が出すの。これぐらいさせて」

「…もう!」

横で見ていた葵さんは笑っていた。

「あとはこれで、いいわね。どう?」

「はい。いいです。私じゃ、選ばないかも…」

「たまにはね、隠れていてもオシャレしなきゃ。自分を隠しすぎると、本当の自分自身を見失うわよ。涼香、あなた自身をね」

「葵さん…」

「瑠璃はね、自分のせいで涼香が、隠れなきゃいけないのが、悔しいって言ってたのよ。どうして比べられるんだろう、って。私は私、涼香は涼香なのにってね。あぁ見えて悩んでるのよ、瑠璃も。今回の事もね、涼香は涼香らしい服を着てもらいたいから、私の店で選んで欲しいって、見立てて欲しいって頭下げられたらね?」

葵さんの言葉が、心に刺さる。
瑠璃も苦しんでたんだ。
私だけが悩んでると思ってた、そうじゃなかったんだ。

「葵さん。ありがとうございます」


「お礼言う人、間違ってない?さ、明日はこれで、専務さんだっけ?悩殺してきなさいっ」

バンッ

「痛っ…」

思いっきり葵さんに背中を叩かれた。
悩殺って…いやないない。

少し、オシャレをして心が上向きになれた夜だった。


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