once again
押してしまったものは仕方ない…

「…はい、高瀬です」

「おや、反応薄いですが?そんなに私からの電話は嫌かな?」

まただ。
この人の本心が見えないから、対応がなにが正しいのか分からなくなってくる。

「…ご用件は?」

「今すぐ会いましょう」

「は?」

「冗談ですよ。明日の事と言いたいんですが、今よろしいですか?」

ほんとに、冗談と真剣の境目がこの人はわからない。
私の普通が通用しない…

「室長、本題で構いません。言いたい事言ってもらえますか?」

「…っ、分かった」

短い沈黙の後、電話の向こうで室長の空気が変わったのが分かった。

「急で悪いんだが、明日パーティの後に蓮の見合いが決まった」

見合い…専務が見合い。

「聞いてるのか?」

「っ、はい。聞いてます」

室長に声をかけられ、気がつく。

「まぁ、見合いと言っても正式な見合いじゃないが。夜も遅いからな、顔合わせと言う感じの食事会だ。明日は蓮と何時に約束してる?」

「5時過ぎには会社に行くと伝えてあります。6時からパーティーで、1時間程の予定ですが」

「そうか。相手の人とは7時に同じホテルで食事予定にしてある。それまでに蓮を解放出来るか?」

「…っ、専務はこの件ご存知なんですか?」

「いや、蓮は知らない。社長からは言うなと言われている。だから黙っててくれ。見合いがあると分かれば、あいつは絶対君を連れてどこかに行くはずだ」

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